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ねぎとろ丼

ねぎとろ丼

変なのはお互い様で

*全年齢という板を考慮してネチョ表現はない様にしてます。どなたでもどうぞ。ただし、百合・レズ展開が苦手な方はお戻り推奨。














   『変なのはお互い様で』



 講義中。私宇佐見蓮子は講師の話を聞かず、ノートも取らずに今晩の予定を考えていた。彼女と、何をして過ごすかを。
 彼女とは秘封倶楽部というサークル仲間にして相棒こと、マエリベリー・ハーン。愛称、メリー。
 年頃の私は同い年の男に何の関心も抱かずに、メリーと行動を共にしている。
 クラブ活動だけでなく、プライベートも一緒にいることが多かった。
 そんなとき、つい最近のことである。大学構内を歩いているときのことだ。
 メリーがベンチに座って読書をしていたのを見つけた。私は声をかけようとした。
 そのとき彼女の耳に何か聞こえたのか、彼女は私にそっぽを向くような形で顔を上げたのだ。
 何気ない仕草から見えた彼女の横顔に、ときめきを感じたのである。
 綺麗に整った髪形、結界の境界が見えるというその瞳、小さくかわいい鼻、私を惑わす魔法の言葉を囁くその口。
 その全てが、一つの絵に見えた。芸術作品だと錯覚してしまうほど、私の心を鷲掴みにする魅力があったのだ。
 気がつけば、彼女の方から声がかかっていた。私は恥ずかしくなって、下を向くしかなかった。
 そんなことがあったのだ。
 以来、彼女に対して以前とは少し違った感情を抱くようになった。
 一緒に騒いだり、遊んだりするだけでなく、全てを共有したいと思うようになった。
 嬉しいことも、悲しいことも、腹が立つようなことも、楽しいことも。お互い喋ることやすることがなくとも、一緒に沈黙を過ごしたい。
 そう思うようになってきた。
 今夜はこのことを伝えよう。星のよく見える、街外れの丘で。
 大学の授業が終わる。鐘の音と共に講師から解散の声が出て、クラスの皆は教室を出て行った。
 携帯電話で相棒と連絡を取り合う。彼女も今授業が終わったところのようなので、構内のカフェテラスで落ち合うことにした。
 目的地に着いた頃には相棒のメリーがすでに着いていて、コーヒーも頼まず、参考書を睨んでいた。
「やあメリー。難しい顔してるわね」
「あら蓮子。聞いてよ、来週までに何十枚ものレポートを書かないといけないのよ」
「それは災難ね」
「そう思わないとやっていけそうにないわ」
 隣へ座り、コーヒーを注文。彼女はレポートをまとめるために、本に印をつけるので大変なようである。
「この前見に行ったところ、酷かったわね」
「あの、山奥にある境界を越えたときのこと? 酷いってものじゃないわ」
 彼女の提案で、とある山奥へ境界を暴きに行ったときのこと。その先へ越えるなり、何者かに追い掛け回される羽目になったのである。
 幸い、転んで擦り傷を負った程度で帰ることができたが、一歩間違えていればどうなるなっていたやら。想像もしたくない。
「あんな体を張るようなこと、二度と御免ね」
「同感」
 コーヒーを啜った。私は彼女に「頼まないの?」と聞くと慌ててウェイターを呼んだ。よっぽどレポートに集中しているらしい。
 メリーの慌てる様に、ついうっとり見惚れてしまった。
「ところで蓮子、何かあったの? 妙にそわそわしちゃって」
「そ、そう?」
 今夜決行しようとしてることがバレてしまったのだろうか。彼女に、告白すること。胸の内を吐いてしまうこと。
 察しをつけられたところで、それはそれでいいかなとも思った。
「気のせいだと思うけど」
 そうでもないみたいである。
「ねぇ、メリー……」
「なあに、蓮子?」
「その、この後空いてる?」
「ええ、暇よ」
「そう。じゃあ……よかったら、星でも見に行かない?」
「いいけど、どうしたの? 改まって」
「な、なんとなく……ふと、そう思ったの」
「変な蓮子ね」
 しばし沈黙。何となくコーヒーを飲み続けるが、とうとう無くなった。
 どうしたものか。さっきから、胸の高まりが収まらない。
 落ち着くためにウェイターさんから出してもらったお冷も飲んでみるが、やはりなくなると落ち着かなくなる。
 メリーはよっぽど忙しいのか、私のことなど気にせずまとめの作業。途端に、自分が邪魔に思えてきた。
 盛り上がっているのは私だけで、星を見に行くと持ちかけたのが告白することの前置きとはいえメリーは楽しみにしていないのかもしれないから。
「あーもう、こんなのやってられない。こんな事してる間にコーヒー冷めちゃったし」
 メリーが本を閉じてそう言った。彼女の行動に思わず驚いて、テーブルを蹴ってしまった。
「どうしたの蓮子? 暴れん坊さんね」
「あはは。ごめん、ごめん……」
「急に何も喋らなくなるし、やっぱり変よ」
「そ、そんなことないわ。たぶん」
「……何か企んでるんじゃないでしょうね」
 驚いた。心を見透かされたように思ったから。
 両手を振って否定するも、疑い晴れていないのか、腕を組んで睨んでくる。
 かと思えば、彼女は笑い出した。冗談で良かった。
「あー、お腹空いた。レポートなんて放っておいてケーキでも食べましょうよ」
「賛成」
 美味しそうにケーキをほお張る彼女も素敵だった。
 フォークを操り、ケーキを小さく切る仕草には見惚れてしまった。
 ケーキを食べ終えて、おかわりしたコーヒーで流しこむときに見えた喉の動き。
 つい見入ってしまい、またメリーに変な視線を送られるのだった。
 やはり私は、メリーにメロメロなようである。
「そういえば蓮子、晩御飯どうしよっか」
「……メリー、私美味しいスパゲッティのお店知ってるの。そこ行きましょうよ」
「あら、奢ってくれるの?」
「も、もちろんよ!」
「言ってみるものね」
「ここから少し歩かないといけないけど、素敵なお店なの。是非行きましょう」
「それは楽しみだわ」
 カード状の学生証で清算を済ませて、大学を出た。
 太陽は沈み、空にはちらほらと星が見えた。
 星を見てわかる今の時刻は、夜の七時過ぎ。
 今からご飯を食べに行くというのに、メリーのことばかり考えてちっともお腹に物を入れる気分ではなかった。
「ところで蓮子。そこはどのスパゲティがオススメ?」
「……え? ごめん、もう一回言って」
「もう……。オススメは何、て」
「ああ、オススメね、うん。たらこスパゲッティがいいわよ」
「また中途半端に日本的なスパゲッティが美味しいのね」
「日本人にはぴったりよ」
「それもそうね」
 三十分ほどあるいて、店が見えてきた。
 そこは自営業のようなお店で、狭く、客も少なく、メニューも割高。そういう店だ。
 だけどお店のお姉さんはすごく丁寧で、料理は美味しく、サービス、接客態度もとてもいい。
 いままでメリーには秘密にしていたが、ときどき自分へのご褒美として食べに行っていた店である。
 お店へ入るとデパートの店員のような、発音が上手な挨拶が聞こえた。
「へぇ、すごく素敵な店じゃない」
 メリーが呟いた。店の中はよく掃除されていて、清潔感が漂っていた。
 お姉さんに勧められるまま、一番奥の席へ。
 メニューを受け取らず、たらこスパゲッティを二つ頼んだ。
「すごいね、蓮子。すごくこだわりのありそうなお店じゃない」
「でしょう」
「もっと早くに教えて欲しかったなあ」
「まあ、訊かれなかったし」
「ずるいわ、蓮子。そんなのなしよ」
 そう言うが、メリーは笑っていた。良かった、気に入ってくれて。
「ところで蓮子」
「なあに?」
「人気のない街外れまで私を誘って、何をするつもりなの?」
 メリーの口が、さらににやけた。笑ってはいるが、暖かい人間的なものとかけ離れて、悪魔の冷笑に近いもの。
 私の考えていることを全て把握していながらも、何か企んでいたりしないの? と訊かれているような。そんな感覚。
「や、やあねえ、メリー。誤解するようなこと言わないで」
「本当? 蓮子は本当に、ただ星を見たいだけなの?」
「そ、そうよ。急にどうしたのよ……」
 人が変わったメリー。怖かった。もしかしたらメリーは私が恋心を抱いているのをとっくに知っていて、メリー自身は嫌がってるんじゃないかと思った。
 睨み付けるメリーを直視できない。そのうち、メリーは噴出した。
「あははは、ごめんさない、蓮子」
「メ、メリー?」
「ふふふ、ほんとに、ごめんね。あははははは」
 お腹を抱えて笑い出すメリー。どうやら、私はからかわれていた様である。
「いやだわ、メリー。酷い、あんまりよ」
「だって、ここまで怖がるなんて……ふふ、あははははは」
 そっぽを向いていじける。そんな振りを見せて、私も笑った。
 いたずらで良かったと安心した。本当に思われていたら、どうなっていたやら。
「お待たせしました」
 店員の人が料理を持ってきてくださった。
 フォークを手にとって麺を口に運ぶ。メリーもそれに倣った。
 メリーは美味しいとはにかんだ。良かった、気に入ってくれて。店員さんも笑ってる。
「もっと早くに教えてくれてたら、良かったのになあ。そしたら色々食べに来るのに」
「まあまあ、これから来ればいいじゃない」
「それもそうね」
 メリーは納得して、スパゲティを啜った。メリーの食べる様子が気になって、なかなか喉を通らなかった。
 それから。メリーに待ってもらって、たらこスパゲティを平らげた。
 時々こちらを見つめるものだから、恥ずかしくなったりして食事は思ったように進まなかった。
 お冷で口の中を綺麗にして、お姉さんに代金を払った。
 お礼を言われて、店を後にする。
「ご馳走様、蓮子。本当にいいの?」
「お粗末様。たまになんだから気にしないの。今度メリーの好きなお店教えてね」
「そうね。それでおあいこね」
 それからバスを使い、街外れへ向かった。バスの中に自分達以外の乗客はいなかった。
 授業で疲れているのか、乗るなりメリーは寝てしまった。
 隣に座っていて、頭をこちらにもたれかけてくるものだから、ドキッっと来た。またときめいてしまった。
 寝顔があんまりかわいいから、少し覗き込んでやったり。
 何より、頭を私の肩に乗せているこの状況が嬉しくて堪らない。きっと、今の私は変態だ。口がにやけているから。
 彼女の肩に手を置いてみようか。そう思って、やめた。そんな仲ではないと思うから。
 私達は秘封倶楽部の部員。相棒同士。大学の友達。決して恋人、愛人同士なんてものじゃないから。
 呼び鈴のボタンを押してバスを止めてもらった。メリーを起こして、降りる。外はもう真っ暗だった。時刻は九時前。今夜は月が出ていなかった。
「ごめん、蓮子。つい気が緩んだら、寝ちゃってて」
「いいのよ、つき合わせちゃってるのはこっちの方だし」
 私達は停留所から少し歩いたとこにある公園へ。
 その公園の裏は小さな山のように膨らんでおり、見晴らしのいい場所になっている。
 私の、お気に入りの場所である。
「こんな所があるのね」
「そうよ。ここが一番星が見えて、景色がいいとこなの」
 整備された階段を昇って、丘の上へ。
 そこからは、街の夜景も見渡せるようになっていた。
 数々の怪奇現象を見てきた彼女も、感嘆の声を漏らした。
「素敵な場所じゃない」
「そうでしょ、メリー」
 彼女が草むらに腰を下ろした。自分もそれに習う。
「うん、たまにはこういう景色を見るのもいいわね。ここに怪奇現象でも起これば、ベターだったけど」
「それ、同感」
 少し沈黙。二人、街の景色に見惚れた。
 欠伸が出る。疲れているのだろうか。
 私はつい、寝転がった。メリーも同じように寝転がった。
 街の眩しい光に負けて、ちらほらとしか見えない星々が広がっていた。
「でも、こっちのほうが綺麗かも」
「弱い光のほうが、なんだかロマンチック」
「そうね」
 お互い話すことがなくなって、再び沈黙が訪れる。でも、ちっとも退屈には感じなかった。
 星を見つめる。数えなくとも、一秒ごとに時間が進んでいるのがわかった。私はそういう眼をしているから。
 最も、隣のメリーが持つ眼と比べると貧相な気がするが。
 彼女の身なりもそうだ。私のそれと比べると、ずっと綺麗でお洒落だ。
 柔らかそうに膨らんだ帽子。あえて派手さを求めず、ゆとりある服を選んだそのセンス。相反するようにアクセントとしてつけた、胸の赤いリボン。
 それに引き換え、私ときたら気取った鍔の広い帽子、少しでも可愛くみせようと髪に結んだリボン、かっこつけたネクタイ、ありきたりな白いシャツに安っぽい真っ黒なスカート。
 さすがに言いすぎかもしれないが、メリーと比べると私はずっと綺麗じゃないし、かっこよくもない女だと思う。
 溜息が漏れる。もう少し、服を選んで家を出るべきだったかと。
「どうしたの、蓮子。悩み事でもあるの?」
「え、いいや、メリーの服ってすごくいいわねって考えてただけよ」
「そうかしら? あなたのと比べると味気ない気がするわ」
「そ、そんなことないわ! その帽子、物凄くお洒落だし、お洋服はとっても素敵だし……」
「何を言うのよ、蓮子の方がかっこよくて嫉妬しちゃうぐらいよ。その帽子とネクタイ、ものすごく決まってて、蓮子にぴったりのファッションだわ」
「そ、そうかしら……?」
「勿論よ」
 メリーにまじまじと褒められて、嬉しくなった。飛び跳ねたいぐらいに。
「そんなに格好いいんだから、男の人に声をかけられることだってあるんじゃない?」
「……」
「あ……いや、悪いこと言っちゃったかしら。その、ごめんなさい……」
「そんなのじゃないの」
「……え?」
「聞いて、メリー。最近ね、あなたを見ていて時々変な気分になるの」
「れん、こ?」
「今日もそう。あなたといるだけで胸がどきどきしたり、何も考えられなくなるときがあるの。それはもう、周りが見えなくなっちゃうぐらいに。どうしてだと思う?」
「……ちょっと蓮子、本気?」
「大真面目なの。私は本気で、メリーのことが好きで好きで、しょうがないの」
「蓮子……」
「男の人じゃ、どれだけ顔が良くても、どれだけ優しい人でも駄目なの。でもあなたは違う。特別。唯一、私を惹きつける人なの。ねえメリー。私と付き合って」
「れ、蓮子? 私達、女同士よ。それなのに……」
「メリー! 私からかっているつもりじゃないの!」
「……本気みたいね」
 つい、叫んでしまった。が、彼女は驚かずに受け止めてくれた。
「あなたと、一緒にいたいの。あなとたじゃなきゃ、駄目なの。あなた以外の人となんて……」
「私もよ、蓮子」
「え」
 驚きが漏れる。メリーは寝転がる私の上へ素早く覆いかぶさると、私の唇を奪った。奪って、微笑んだ。
 優しく口付けが終わる。物凄く近くにあった彼女の顔があって、とても恥ずかしかった。
「メ、メリー……」
「わたしも、ずっとあなたのことばかり考えてた。今日誘われたとき、もしかして、と思ったわ。何も怪奇現象が起きるわけでもないのに、星を見に行こうなんて言うし」
「え……う、うん……」
「カフェにいたときなんか、私がコーヒー飲むところじろじろ見てきたし、ご飯食べるときも見てきたし」
「……」
「バスに乗って、わたし寝ちゃってたけど、実はあれ嘘。寝てないの」
「もしかして」
「蓮子が恥ずかしそうにわたしの顔を覗くの、ものすごくかわいかった」
「うそお! ひっどーい!」
「うふふふふ……」
「それじゃあ、私がここへ連れて来て、告白することまで、全部お見通しだったわけ?」
「そういうこと」
 なんてことだ。一人で浮き浮き気分であったのは思い込みで、彼女は何食わぬ顔で私の行動を楽しんでたということになる。
 誘った側なのに、遊ばれているのは私の方だった気分。
「ねえ、メリー。メリーは私のこと、どうなの?」
「大好きよ。ううん蓮子、愛してる、って言ってあげる」
「あ……う、うん……私も、その、メリーを愛してる」
 もう一度。今度は私の方から。キスを迫った。彼女の口から、バターの香りがした。
 目を瞑って、口先で触れ合う。さっきの急なキスよりも、物凄く嬉しくなった。
 メリーの方から離れていく。目を開ければ、メリーの笑顔。
 彼女は私の胸に手を当てて言った。心臓がドキドキ言ってるって。私も遠慮せずに彼女の胸に手を当てた。彼女も、ドキドキしていた。
「ねえ、メリー。髪の毛に触ってみてもいいかしら」
「遠慮なんてする必要ないわ」
 透き通るような彼女の金髪に、その一本一本を愛でるように触った。彼女も同じく、私の髪を撫でた。
「いいわね、メリーの髪。すごくさらさらしてる」
「蓮子のだって。どんなシャンプー使ってるのか気になるぐらいだわ」
 今度は失礼ながら、彼女の二の腕を掴んだ。驚いたのか、メリーが震えた。
「やあねえ、蓮子。なんだかいやらしい。そんなところ揉むなんて、変態だわ」
「ちょ、ちょっと柔らかそうだな、なんて思って……」
「そんなに脂肪があるって言いたいの? あんまりだわ、蓮子」
「いいじゃない! こんなにぷにぷに出来る程あって!」
「それって蓮子が揉みたいだけじゃない」
「……」
「やあん、もう! そこまできつくしないでよ」
「あ、ごめん……」
「お返しにわたしも揉んでやるんだから」
「あ、くすぐった……ううん……」
「やあねえ、艶な声出して」
「いやらしく聞こえた? ちょっと言ってみただけ」
「蓮子ったら本当に変態ね」
 じゃれあって。ちちくりあって。弄くりあって。
 こんな人気のない、星空の下で。メリーに思いを伝えて、伝えられて、キスして。
 名目とはいえ星を見に来たのに、星に私達の様子を見せ付けているみたいだった。
「ねえメリー。そろそろ遅いから帰りましょうか」
「そうね。明日も、学校があるんだし」
 私達は手を繋いで、バスの停留所まで向かった。
 停留所にはタイミングよくバスが通りかかったところで、走って追いかけると乗せてもらえた。運転手曰く、今日最後のバスらしい。
 乗った途端、メリーは寝てしまった。今度は演技ではなく、本当に寝てしまった。頬を抓ると、寝かせて欲しいと呟いたから。
 私は宇佐見蓮子。隣の彼女はマエリベリー・ハーン。
 私達は秘封倶楽部の相棒同士。大学の友達。いやそれだけじゃなく、今夜からお互いに認める愛人同士。
 明日からは、堂々と一緒に歩いてやろう。手を繋いで。
 周りから何と思われても構わない。私達は恋仲なんだから。
 当然、同姓同士で付き合うのはおかしいだろう。普通に考えれば。
 でもメリーでなければいけない。彼女じゃないと。男では駄目だ。
 もう一度、メリーを手を取って、握った。起きているのか、反射なのか、彼女が握り返してくれた。
 今、バスの運転手には私達はどう見えているのだろう。
 眠っている彼女の唇を今奪ったら、運転手はどう思うのだろうか。
 そんなことを考えて、バスに揺られた。
 明日はどんなお洒落をして、彼女を惹きつけてみようか。
 明日は彼女と、どんなことをしてみようか。
 明日は何回、キスを迫ってみようか。

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